|
巻頭言
元太郎です。私事で恐縮ですが、正月休みに家内とイギリスのブライトンに行って参りました。目的は、留学中の息子と会って、ホストマザーにあいさつすることと、The Who“Quadrophenia”の映画版『さらば青春の光』の舞台を歩いてみることでありました。
ブライトンは大変にきれいな町でした。古い建物と石畳が残り、町のすぐ前には小石に覆われた浜辺に波が打ち寄せ(砂地でないので泥っぽくない)、さんばしに造られた遊園地にメリーゴーラウンドが回り、らせん滑り台 Helter Skelterがありました(風が強くて閉鎖されていましたが)。海岸に立ち、思わず Is it me ? For a moment...と口ずさみました。
映画の最後で、ジミーがスクーターを疾走させる白い崖 Seven Sistersにも行きました。ブライトンからバスに小一時間乗ると、visitor centreがあり、そこから車道を離れて、車の入れない木戸を開けて(放牧をしているために、牛や羊が逃げないように柵がある)40分ほど周りに何もない歩道を進むとようやく崖を見上げる海岸か、(途中から道を分けると)海を見下ろす断崖に着きます。この時期、だだっ広い草原には、犬を散歩させている土地の人と数名すれ違っただけで、誰もいませんでした。
絶壁から海を眺め、延々と続く崖の起伏を堪能しました。映画で使われたのは、7つの絶壁(だからSeven Sisters)の一番奥だそうですが、雰囲気は十分に味わえました。よくこんな場所で撮影をしたものだと思いました。
日本の観光地と丸っきり違うのは、みやげ物屋・食堂はおろか、交通の便もなく、誰もが来れる場所ではないということです。大自然の景観を手つかずに残そうという土地の人の心意気を感じました。崖の縁にも柵はなく、落ちるも落ちないも自己責任というあんばいでした。
そう言えば、ブライトンでもロンドンでもバスに乗って、二階のデッキに上がろうとすると、運転手はおかまいなく発車させ、ころげる奴はちゃんとつかまらないのが悪いと言わんばかり。「バスが止まるまでは席を立たないでください」とおせっかいな注意をする日本の営業方針とはえらい違いです。
どちらがいいのかは個人の感じ方によるでしょうが、社会に対する意識の違いをひしひしと感じました。息子の話だと、降水量の少ないブライトンは節水を含め、町ぐるみでエコロジーに取り組んでいるとのこと。また、イギリスのメディアが「20世紀の発明で最も不要だったもの」というアンケートを取ったら、1位は「ペットボトル」だったそうです。
価値観を相対化するのは刺激的だなあと感じつつ、ブリティッシュ・ロックにも見られるこだわりを生んだ国民性が実感できた年明けでありました。
2012年2月1日 元太郎
Back Number:
|